ブヨに噛まれてしまった直後の、わずか数分間の行動が、その後の症状の悪化を大きく左右します。パニックにならず、正しい応急処置の手順を冷静に実行することで、猛烈なかゆみやパンパンの腫れを、最小限に食い止めることが可能です。アウトドアに出かける際は、これから説明する手順と、必要な道具を頭に入れておきましょう。まず、もし手元にあるならば、STEP1として「ポイズンリムーバー」を使用します。これは、注射器のような形をした毒吸引器で、傷口にカップを当てて吸引することで、皮膚の下に注入された毒液を物理的に吸い出すことができます。噛まれた直後、毒が体内に広がる前に使用するほど効果が高いため、渓流釣りなどブヨの多い場所へ行く際には、ぜひ携行したいアイテムです。ポイズンリムーバーがない場合は、次のSTEP2に直ちに移ります。STEP2は、「洗浄」です。傷口を、水道水などの清潔な流水で、石鹸を使ってよく洗い流してください。この時、傷口の周りの皮膚を指で強くつまみ、中の毒液を絞り出すようにしながら洗うと、より効果的です。ただし、絶対に口で吸い出してはいけません。口の中に傷があった場合、そこから毒が体内に入ってしまう危険性があります。洗浄によって、傷口に付着した毒や雑菌を洗い流し、化膿を防ぎます。STEP3は、「冷却」です。洗浄が終わったら、患部を保冷剤や氷嚢、あるいは冷たい水で濡らしたタオルなどで、徹底的に冷やしてください。冷やすことで、血管が収縮し、毒の吸収を遅らせるとともに、炎症反応そのものを抑え、痛みやかゆみ、腫れを和らげる効果があります。最低でも15分以上は、じっくりと冷やし続けましょう。そして、応急処置の最後のSTEP4が、「薬の塗布」です。ブヨによる皮膚炎は、非常に強い炎症反応です。そのため、市販薬を選ぶ際は、単なるかゆみ止め(抗ヒスタミン成分)だけでなく、炎症そのものを強力に抑える「ステロイド成分」が含まれた軟膏やクリームを選ぶのが最も効果的です。薬局で薬剤師に相談し、「ブヨに噛まれた」と伝えれば、適切な強さのステロイド外用薬を選んでもらえます。この4つのステップを迅速に行うことが、その後の苦しみを大きく軽減してくれるのです。
ブヨに噛まれた時の正しい応急処置マニュアル