恐ろしい皮膚炎を引き起こすブヨとの遭遇を避けるためには、彼らがどのような場所に棲み、いつ活動するのか、その生態と行動パターンをあらかじめ知っておくことが、最も効果的な予防策となります。ブヨは、実は水質の指標となるほど、比較的きれいな水辺を好んで生息する昆虫です。彼らの幼虫は、川や渓流の石の表面や水草に付着し、流れてくる有機物を食べて成長します。そのため、成虫となったブヨは、その発生源である水辺からあまり遠くへは行かず、渓流沿いや、山間のキャンプ場、ゴルフ場、別荘地といった、自然豊かで水のきれいな場所に多く生息しています。都会の公園などではあまり見かけない一方で、こうしたアウトドア・レジャーのメッカが、彼らにとっての主要な狩場となっているのです。次に、彼らが活動する「時間帯」です。ブヨは、真夏の炎天下のような高温と乾燥を嫌います。そのため、彼らが最も活発に吸血活動を行うのは、気温が少し下がる「朝方」と「夕方」、いわゆる「朝まずめ・夕まずめ」と呼ばれる時間帯です。この時間帯は、釣りやキャンプで最も心地よい時間でもあり、つい油断してしまいがちですが、ブヨにとっては最高のディナータイムなのです。そして、活動する「季節」は、主に春から夏にかけて、具体的には3月から9月頃までですが、そのピークは地域によって多少異なります。一般的には、気温が上がり始める初夏、5月から7月頃が最も活動が活発になるシーズンと言えるでしょう。また、ブヨが特に狙いやすいのは、肌の露出している部分です。彼らはあまり高く飛ぶことができないため、特に足元、くるぶしやすね、ふくらはぎなどが集中的に被害に遭いやすい場所です。半ズボンやサンダルといった軽装は、自ら餌を提供しているようなもの。さらに、二酸化炭素や体温に引き寄せられるため、運動をして汗をかいている人は、よりターゲットにされやすくなります。美しい自然には、必ずリスクが伴います。ブヨが潜む場所と時間を知り、その時間帯には特に厳重な対策を講じること。それが、楽しい思い出を不快なかゆみに変えないための、賢明なアウトドア愛好家の嗜みと言えるでしょう。