なぜ蜂は室外機に巣を作りたがるのか
私たちの生活に欠かせないエアコンの室外機が、なぜ蜂にとって魅力的な巣作りの場所となってしまうのでしょうか。その理由は、蜂が巣を作る上で重視する、いくつかの条件を室外機が見事に満たしてしまっているからです。蜂が巣を作る場所を選ぶ際の絶対条件は、「雨風をしのげること」と「外敵から身を守れること」です。初期の巣は非常に脆く、女王蜂が一匹で子育てをするため、安全な環境が不可欠なのです。室外機の構造を見てみると、上部や側面にはカバーがあり、内部にはファンや配管が複雑に入り組んでいます。このカバーの下の隙間や、内部の空洞は、雨風を直接受けない絶好の隠れ家となります。特に、建物の北側や物陰に設置されている室外機は、直射日光も避けられるため、蜂にとってはさらに快適な環境となります。また、室外機は地面から少し浮いた状態で設置されていることが多く、アリなどの天敵が侵入しにくいという利点もあります。さらに、室外機が発する微弱な熱や振動が、蜂にとって何らかの心地よさを与えている可能性も指摘されています。春先、冬眠から目覚めた女王蜂は、たった一匹で新しい巣を作る場所を探して飛び回ります。この偵察飛行の際に、条件に合った室外機を見つけると、巣作りを始めてしまうのです。最初はほんの数センチの小さな巣ですが、働き蜂が羽化し始めると、その成長スピードは一気に加速します。私たちの生活空間のすぐそばにあるエアコンの室外機。それは、人間の利便性のために作られた機械であると同時に、蜂にとっては子孫を残すための、理想的なシェルターに見えているのかもしれません。この蜂の習性を理解することが、巣を作らせないための予防策へと繋がっていきます。