害虫のいないクリーンな環境は、体の小さな赤ちゃんや、床に近い場所で生活するペットにとって、特に重要なものです。しかし、その環境を手に入れるためにバルサンを使用する際には、大人だけの家庭とは比較にならないほどの、最大限の注意と配慮が求められます。なぜなら、彼らは大人よりも化学物質に対する感受性が高く、薬剤の影響をより強く受けてしまう可能性があるからです。「バルちゃん中に家にいても大丈夫か」という問いに対して、ペットと赤ちゃんがいるご家庭の場合は、その答えは「絶対に、何があってもNO」であり、その避難プロセスは完璧に行われなければなりません。まず、犬や猫、ハムスターや小鳥といった、呼吸で薬剤を吸い込む可能性のあるペットは、必ずケージやキャリーケースに入れて、家全体から完全に屋外へ避難させてください。一時的に預かってくれる友人宅やペットホテル、あるいは車の中などで、指定された時間以上を過ごさせる必要があります。特に注意が必要なのが、水槽で飼育している魚やエビ、両生類などです。彼らを水槽ごと移動させるのは現実的ではありません。この場合、水槽を外部の空気から完全にシャットアウトする必要があります。まず、エアレーションやろ過フィルターの電源を必ず切ってください。これらが作動していると、室内の薬剤を含んだ空気を水中に取り込み、中の生体が全滅する危険性があります。次に、水槽全体を大きなビニールシートやラップで覆い、テープを使って隙間ができないように完全に密閉します。赤ちゃんがいるご家庭では、避難はもちろんのこと、帰宅後のケアが極めて重要です。バルサン使用後は、説明書に記載された時間以上、徹底的に換気を行います。室内の空気が完全に入れ替わるまで、赤ちゃんを家に入れるのは絶対に避けてください。そして、換気が完了したら、次は入念な拭き掃除です。赤ちゃんはハイハイで床を移動し、何でも口に入れてしまいます。そのため、床や建具、家具の表面に残った薬剤を、固く絞った清潔な雑巾で丁寧に水拭きする必要があります。ベビーベッドやおもちゃなど、赤ちゃんが直接触れるものは、事前にビニール袋に入れるか、別の部屋に移動させて完全に隔離し、使用前に再度拭き上げておくとより安心です。大切な家族を化学物質の脅威から守るために、「念には念を入れる」という姿勢こそが、飼い主として、親としての重要な責任なのです。