もし、あなたがアウトドア活動中にブヨに噛まれてしまったら、その後の症状の経過と、悪化させないための注意点を知っておくことが非常に重要です。ブヨによる被害は、一般的な蚊に刺された場合とは、その深刻度において一線を画します。まず、噛まれた直後の症状です。ブヨは皮膚を噛み切って吸血するため、直後にはチクッとした痛みと共に、針で刺したような小さな出血点が見られることがあります。この時点では、かゆみや腫れはほとんどなく、多くの人は「何かに刺されたかな」程度にしか感じないかもしれません。しかし、油断は禁物です。本当の苦しみは、数時間後から翌日にかけて、遅れてやってきます。時間が経つにつれて、ブユが注入した唾液腺物質に対するアレルギー反応が本格化し、患部は猛烈なかゆみと共に、赤く、そしてパンパンに腫れ上がります。その腫れは、時に直径10センチ以上に及ぶこともあり、熱感を伴い、触れると硬いしこりのようになっているのが特徴です。症状がさらに悪化すると、腫れの中心に水ぶくれ(水疱)ができたり、内出血のように紫色に変色したりすることもあります。この激しいかゆみと痛み、そして不気味な腫れは、通常でも1~2週間は続くと覚悟しなければなりません。そして、この苦しい期間に、絶対にやってはいけないこと、それは「掻きむしる」ことです。猛烈なかゆみに耐えかねて患部を掻き壊してしまうと、爪の間に潜む細菌が傷口から侵入し、二次感染を引き起こす危険性が非常に高くなります。そうなると、「伝染性膿痂疹(とびひ)」や「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」といった、より深刻な細菌感染症に発展し、抗生物質による治療が必要となる場合があります。また、強く掻きむしった皮膚は、炎症が治まった後も、シミのような茶色い色素沈着や、ケロイド状の醜い傷跡として、長期間残ってしまう最大の原因となります。どれほどかゆくても、歯を食いしばって掻くのを我慢し、正しい応急処置を施すこと。それが、さらなる悪化を防ぎ、きれいに治すための、最も重要な鉄則なのです。