夏の野外活動で、不快なかゆみや腫れを引き起こす吸血昆虫は、ブヨだけではありません。私たちの周りには、それぞれ異なる特徴を持つ、様々な「血を吸うライバル」たちが存在します。被害に遭った際、その犯人が誰なのかを正確に見分けることは、適切な対処法を知り、今後の予防策を立てる上で非常に役立ちます。まず、最も身近な存在である「蚊」です。蚊は、細長い針のような口吻を皮膚に突き刺して吸血します。そのため、刺し口は一つで、直後からかゆみを伴う赤い膨疹(ぼうしん)が現れますが、通常は数時間から数日で症状は治まります。ブヨのように、後からパンパンに腫れ上がったり、硬いしこりが残ったりすることは稀です。次に、ブヨとしばしば混同されるのが「ヌカカ」です。体長1~2ミリと非常に小さく、網戸さえもすり抜けてしまうため、「スケベ虫」という俗称もあります。彼らもブヨと同様に皮膚を噛み切って吸血するため、症状は非常に似ています。翌日以降に猛烈なかゆみと赤い発疹、時に水ぶくれが現れますが、ブヨよりも体が小さいため、一つ一つの被害は小さいものの、一度に数十カ所を集中してやられることが多いのが特徴です。海岸や水田、湿地などで、広範囲に無数の発疹ができた場合は、ヌカカの仕業を疑うべきでしょう。そして、より大型で、強烈な痛みを伴うのが「アブ」です。体長1~2センチほどのハエのような姿をしており、ブヨと同じく皮膚を切り裂いて吸血します。噛まれた瞬間、ナイフで切られたかのような鋭い痛みがあり、すぐに出血します。腫れやかゆみもひどく、時に細菌感染を起こしやすいのも特徴です。牧場やキャンプ場などで、大型のハエにしつこくまとわりつかれた後に、強い痛みを感じたらアブの可能性が高いです。このように、犯人によって症状の現れ方や、生息場所、活動時間帯は異なります。被害状況を冷静に観察し、敵の正体を見極めること。それが、夏の不快な思い出を繰り返さないための、第一歩となるのです。
ブヨと間違いやすい他の吸血昆虫