あれは、七月の蒸し暑い日の午後のことでした。リビングのエアコンの効きがどうも悪い。フィルターは掃除したばかりなのに、と首を傾げながら、私は何気なくベランダに出て、室外機に目をやりました。その瞬間、全身の血の気が引くのを感じました。室外機の側面、カバーの隙間から、何匹もの黄色と黒の縞模様の虫が出入りしていたのです。そして、その下には、手のひらよりも一回り大きな、シャワーヘッドを逆さにしたような不気味な巣がぶら下がっていました。アシナガバチです。どうやら我が家の室外機は、蜂たちの新築マンションと化してしまっていたようです。インターネットで駆除方法を検索すると、「自力でも可能」という記事と、「絶対にプロに任せるべき」という記事が混在し、私の心は揺れ動きました。費用を節約したい気持ちと、刺されることへの恐怖。しばらく葛藤した末、私はある一文に目を留めました。「蜂は振動と熱で興奮する。室外機は最悪の場所だ」。その言葉に、私は自力駆除という選択肢を完全に捨てました。すぐに地域の蜂駆除専門業者に電話をすると、幸いにもその日の夕方に来てくれることになりました。夕暮れ時、現れた作業員の方は、まるで宇宙服のような真っ白な防護服に身を包んでいました。その姿を見ただけで、私はプロに頼んで本当に良かったと心から思いました。作業は、驚くほど静かで、そして迅速でした。慣れた手つきで巣に薬剤を噴射し、あっという間に巣を撤去。残った戻り蜂にも丁寧に対処してくれました。作業時間は、わずか20分ほど。料金は一万五千円でした。安い金額ではありませんが、あの恐怖と危険から解放される対価だと思えば、納得のいくものでした。翌朝、静かになった室外機を見て、私は深く息をつきました。そして、二度とこんな思いはしたくないと、室外機に防虫ネットを被せたのでした。この経験から学んだ教訓はただ一つ。蜂の巣を見つけたら、無理は禁物。迷わずプロを呼ぶべし、ということです。
我が家の室外機が蜂の巣に乗っ取られた話