蜂用スプレーの主成分として広く使用されているピレスロイド系の薬剤は、昆虫の神経系に特異的に作用しナトリウムチャネルを持続的に開くことで神経を麻痺させ死に至らしめるという強力な殺虫効果を持っていますが、その一方で哺乳類や鳥類に対する毒性は比較的低いとされており、人体に入っても速やかに代謝・分解されて体外に排出されるため安全性は高いと言われています。しかし「安全性が高い」というのはあくまで「直ちに命に関わる毒性はない」という意味であり、決して無害であるというわけではなく、大量に吸い込んだり皮膚に付着したりした場合には様々な健康被害を引き起こすリスクがあることを忘れてはなりません。特に蜂用スプレーは遠くまで飛ばすために大量の薬剤と噴射ガスを一気に放出する設計になっているため、使用者が薬剤のミストを浴びてしまう可能性が高く、目に入れば結膜炎や角膜損傷、吸い込めば喉の痛みや咳、気管支喘息の誘発、皮膚に付けばピリピリとした刺激感や湿疹を引き起こすことがあります。さらに注意が必要なのはペットへの影響であり、犬や猫などの哺乳類には比較的安全ですが、熱帯魚や金魚などの魚類、カブトムシやクワガタなどの昆虫類、そして爬虫類や両生類に対してはピレスロイドは猛毒として作用し、わずかな量が水槽に入っただけで全滅してしまう事故が多発しています。したがってスプレーを使用する際は周囲に人がいないことを確認し、風向きを考慮して自分にかからないように注意するだけでなく、室内の換気扇が回っていて外の薬剤を取り込んでしまわないか、近くに池や水槽がないかといった環境面への配慮も不可欠であり、化学物質を扱う責任者としての自覚を持って使用しなければならないのです。