私たちの生活圏において最も頻繁に遭遇するハチの一つがアシナガバチですが、その中でも特に大型で攻撃性が高いことで知られるのがキアシナガバチです。彼らが作り上げる巣には、他のハチとは異なる明確な特徴があり、それを正しく理解することは安全な住環境を維持する上で欠かせない知識となります。キアシナガバチの巣は、樹木の皮などの植物繊維を自らの唾液と混ぜ合わせ、薄い紙のような質感の素材で構築されます。色は全体的に灰色から淡い褐色をしており、年月が経つとやや黒ずんで見えることもあります。その形状は、一般的にシャワーヘッドを下向きにしたような、あるいは釣り鐘のような形をしており、底部には多数の六角形の穴、いわゆる育児室が露出しているのが最大の特徴です。スズメバチの巣のように外殻で完全に覆われることはなく、常に幼虫やハチの成虫が巣の表面に見える状態で活動しています。巣の大きさは、女王バチが一匹で作り始める春先には数センチ程度ですが、働きバチが増える夏場には急速に拡大し、最終的には直径十五センチメートルを超えることも珍しくありません。キアシナガバチが営巣場所として好むのは、雨風を凌げる開放的な空間です。住宅地では、建物の軒下やベランダの天井、戸袋の隙間、あるいは庭の生け垣や背の低い植え込みの中などが選ばれやすいポイントとなります。特に注意が必要なのは、キアシナガバチは一度営巣に成功した場所やその周辺を翌年も利用する帰巣本能が強いという点です。巣を特定する際の観察術としては、ハチが特定の場所に直線的に飛び込んでいく姿を追うことが有効ですが、キアシナガバチは巣に対する防衛本能が極めて強く、数メートル以内に近づいただけで威嚇行動をとることがあります。彼らは対象をじっと凝視し、羽を小刻みに震わせながら「これ以上近づくな」というサインを送ります。もし、自宅の周辺で鮮やかな黄色の脚を垂らして飛ぶ大きなハチを頻繁に見かけるようになったら、それは近くに巣が存在している確固たる証拠です。巣の発見が遅れると、個体数が増えて駆除の難易度が跳ね上がるため、春から初夏にかけては軒下や庭の植栽を定期的にチェックする習慣が推奨されます。特に、キアシナガバチはスズメバチに次ぐ強力な毒を持っており、刺された際の痛みと腫れは激烈です。巣の外見的特徴を把握し、早期にその存在に気づくことが、不測の事態を避けるための最も賢明な防衛策となるのです。
キアシナガバチの巣の特徴と特定するための観察術