日々、多くの家庭や企業から鳩被害の相談を受けている現場の技師として、私たちが最も対応に苦慮するのが「すでに卵が産み落とされた後」の依頼です。お客様からは「今すぐ捨ててほしい」「一刻も早く除菌してほしい」という切実な声をいただきますが、そこで必ず立ちふさがるのが、野生動物の命を守る法律の壁です。私たちプロの業者であっても、行政への事前申請と許可なしに卵を撤去することはできません。この申請には時間がかかりますし、単に「ベランダが汚れるから」という理由だけでは許可が下りないケースも多いのが実情です。そのため、卵がある状態でのご相談には、多くの場合「雛が巣立つまで待つか、高額な許可申請費用をかけて法的な手続きを踏むか」という、お客様にとって非常に厳しい選択肢を提示せざるを得ません。現場でよく目にするのは、鳩の執念深さです。鳩は非常に帰巣本能が強く、一度卵を産んだ場所を「安全な繁殖地」として深く記憶します。もし強引に卵を撤去したとしても、対策が不十分であれば、数日後には同じ場所に再び新しい卵が産まれていることさえあります。私たちプロの本音を言えば、卵が産まれる一歩手前、すなわち鳩が枝を運び始めた段階で呼んでいただくのが一番ありがたいのです。卵がない状態であれば、その日のうちに巣を撤去し、強力な忌避剤や防鳥ネットを設置して、完全に解決することができます。しかし、多くの方は「数本の枝くらいなら掃除すればいい」と放置してしまい、その数時間後に最初の卵が産み落とされて手遅れになります。鳩の卵を一つ産ませるということは、その後十年以上にわたってその鳩やその子孫と戦い続けるリスクを背負うことだと考えてください。また、最近ではインターネットの間違った情報を見て、自分で卵を温めて孵化させようとしたり、別の場所に移動させたりしようとする方もいますが、これは絶対におやめください。野生の鳩は人間が育てることは極めて困難ですし、何より衛生上のリスクが大きすぎます。私たちが提供できる最善のサービスは、卵が産まれない環境を構築すること、そして万が一産まれてしまった場合は、法を遵守しながら被害を最小限に食い止めるガイドをすることです。鳩の卵との戦いは、発見した瞬間のスピード感が勝負を分けます。「まだ大丈夫」という油断が、数ヶ月に及ぶストレスフルな生活を招くことになるという事実を、一人でも多くの方に知っていただきたいと願っています。