どんなに気をつけていても、人間誰しもうっかりすることはあります。「バルサンの退出時間を勘違いしていた」「家族の一人が、使用中であることを知らずに帰ってきてしまった」など、薬剤が充満している最中の家に、誤って入ってしまうという、想定外の事故が起こる可能性はゼロではありません。もし、そんな緊急事態に直面してしまったら、どうすれば良いのでしょうか。パニックにならず、すぐに行うべき正しい対処法を知っておくことが、健康被害を最小限に食い止めるために非常に重要です。まず、第一に行うべきことは、当たり前ですが、「一刻も早く、その場から屋外へ避難する」ことです。息をできるだけ止め、ドアや窓を開けながら、速やかに家の外へ出てください。そして、新鮮な空気を深く吸い込み、呼吸を整えます。次に、体に付着した薬剤をできる限り取り除くための処置を行います。もし可能であれば、すぐにシャワーを浴びて、髪の毛から足先まで、全身を洗い流すのが最も効果的です。シャワーが浴びられない状況であれば、少なくとも、露出していた顔や手、腕などを、石鹸を使って念入りに洗いましょう。そして、着ていた衣服は全て着替えます。衣服の繊維には、目に見えない殺虫成分の粒子が大量に付着しているためです。目や喉に、チカチカとした刺激や痛みを感じる場合は、水道水で十分にうがいをし、目を洗い流してください。通常、短時間の暴露であれば、これらの初期対応で症状は落ち着くはずです。しかし、もし、頭痛や吐き気、めまい、あるいは呼吸が苦しいといった、明らかな体調の異変を感じた場合は、躊躇なく医療機関を受診してください。その際には、どの製品を使用したのかが医師の診断の助けとなるため、可能であれば、使用したバルサンのパッケージを持参するか、スマートフォンで写真を撮っておくと良いでしょう。事故は起こらないに越したことはありません。しかし、万が一の事態に備えて、正しい知識を頭の片隅に入れておくこと。それが、あなたとあなたの大切な人を守るための、最後のセーフティネットとなるのです。