それは、長年住み慣れたアパートから新居へと引っ越すための準備を進めていた、ある週末の出来事でした。大型家電の裏側は、普段の掃除ではなかなか手が届かない聖域のような場所ですが、冷蔵庫を動かした瞬間に私の目に飛び込んできたのは、想像を絶する光景でした。冷蔵庫の背面の放熱パネル付近や、コンプレッサーの周囲にあるわずかな隙間に、明るい茶色をした小さなアズキのような物体が、びっしりとこびりついていたのです。それがチャバネゴキブリの卵鞘であると気づくまでに、そう時間はかかりませんでした。それまで、キッチンで時折見かける小さなゴキブリには市販のスプレーで対処してきましたが、まさか自分の生活を支える冷蔵庫が、彼らにとっての巨大な孵化工場になっていたとは夢にも思いませんでした。チャバネゴキブリは、暖かくて適度な湿度があり、かつ暗くて狭い場所を産卵場所として好みます。冷蔵庫の裏側は、一年中一定の熱を発しており、料理の際に発生する蒸気や油分が微かに滞留する、彼らにとっての最高級ホテルのような環境だったのです。私は震える手で懐中電灯を向け、その卵鞘を一つずつ確認していきましたが、中にはすでにパカッと割れて空になっているものもあれば、まだ中身が詰まっていて不気味な光沢を放っているものもありました。一つの卵鞘から四十匹近い幼虫が生まれるという知識を思い出し、目の前にある数十個の卵鞘から、これまでにどれほどの数がこの部屋に解き放たれてきたのかを考えると、目眩がするような恐怖を覚えました。私は引っ越し先にこの汚染を持ち込むわけにはいかないと決意し、その場で徹底的な除去作業を開始しました。しかし、卵鞘は驚くほど強力な粘着物質で固定されており、掃除機の吸引力だけではびくともしません。結局、古い歯ブラシやヘラを使い、一つずつ物理的に剥がし取っていくしかありませんでした。この経験を通じて私が痛感したのは、ゴキブリ対策とは成虫を殺すことではなく、その「次世代の芽」をいかに早く見つけ出し、破壊するかにあるということです。見た目が清潔なキッチンであっても、家電の熱源の周りには、私たちの知らないところで命のカウントダウンが刻まれています。これから新生活を始める人や、大掃除を控えている人には、ぜひ一度、重い腰を上げて家電の裏側をチェックしてほしいと思います。あの茶色の小さなカプセルを見つけた瞬間の衝撃は、あなたの衛生観念を根底から覆し、二度と彼らに隙を見せないという強い決意を抱かせてくれるはずですから。
冷蔵庫の裏側で発見したチャバネゴキブリの卵との遭遇記