それは、私がまだ一人暮らしを始めたばかりの頃の、若さゆえの無知と油断が招いた、苦い失敗談です。当時住んでいた古いアパートで、私は人生で初めて、ゴキブリという存在に遭遇しました。パニックに陥った私は、ドラッグストアに駆け込み、最も効果が高そうだった、煙タイプのバルサンを購入。説明書をざっと読んだものの、「まあ、2時間くらい、隣の部屋にでもいれば大丈夫だろう」と、今思えば信じられないほど楽観的な考えで、リビングの中央にバルサンを設置したのです。私は、マスクを二重にし、寝室のドアを固く閉め、さらに隙間にはタオルを詰めて、これで完璧だと信じ込んでいました。バルサンを焚き、煙がもくもくと立ち上るのを確認して、私は寝室へと避難しました。最初の数分は、特に何も感じませんでした。しかし、10分ほど経った頃から、締め切ったはずのドアの隙間から、明らかに薬剤の匂いが漏れ出してきていることに気づきました。そして、喉に、チリチリとした微かな痛みを感じ始めたのです。まずい、と思った時には、もう遅でした。目はチカチカとし始め、咳が止まらなくなりました。マスクをしていても、微細な粒子は容赦なく呼吸器系を攻撃してきます。頭もズキズキと痛み始め、軽い吐き気さえ催してきました。ここにいてはダメだ。私は本能的な危険を感じ、タオルで口と鼻を覆い、煙が充満するリビングを駆け抜け、半狂乱で玄関のドアを開けて外へ飛び出しました。新鮮な空気を吸い込んだ時の、あの安堵感は忘れられません。結局、私は近所の公園で、予定よりもずっと長い時間、惨めな思いで時間を潰すことになりました。あの時、私は身をもって学びました。説明書に書かれている「必ず屋外へ避難してください」という一文は、メーカーの単なる脅し文句ではない。それは、過去の無数の失敗と、科学的な根拠に基づいて書かれた、私たちの安全を守るための、極めて重要な警告なのだと。あの喉の痛みと頭痛は、ルールを軽視したことへの、当然の報いだったのです。
私の大失敗談。バルサン中に家にいて地獄を見た話