ホームセンターやドラッグストアに行けば強力な噴射力を謳う蜂用殺虫スプレーが数多く並んでおりパッケージには「スズメバチも秒殺」といった勇ましいキャッチコピーが踊っていますが、これを鵜呑みにして安易にスズメバチの巣にスプレーを向けることは自殺行為にも等しい極めて危険な賭けであることを深く理解しておく必要があります。市販のスプレーに含まれるピレスロイド系の殺虫成分は確かに蜂の神経系に作用して動きを止める効果がありますが、スズメバチ特にオオスズメバチやキイロスズメバチといった攻撃性の高い種類に対しては即効性が十分に発揮される前に反撃されるリスクが非常に高いのが現実です。スズメバチは巣に危険が迫ると警報フェロモンを放出して仲間を一斉に呼び寄せ集団で攻撃を仕掛けてくる習性があり、スプレーの噴射音や薬剤の匂いは彼らにとって宣戦布告の合図となり、薬剤が効いて地面に落ちるまでのわずか数秒の間に興奮した蜂たちが高速で人間に襲いかかり毒針を突き刺すには十分な時間があります。また市販のスプレーの多くは射程距離が3メートルから10メートル程度とされていますが、屋外の風の影響を受けると薬剤が拡散してしまい狙った巣に十分な量が届かないことが多く、中途半端に刺激を与えることで蜂を激怒させるだけの結果に終わるケースが後を絶ちません。さらに防護服を持たない一般人が普段着のままスプレーを使用することは、毒針が貫通するリスクを無視した無謀な行為であり、万が一アナフィラキシーショックを引き起こせば数十分で命を落とす可能性もあります。したがって巣が作り始めのトックリ型で女王蜂一匹しかいない初期段階であれば慎重に対処することも可能かもしれませんが、直径が15センチを超え働き蜂が出入りしているボール状の巣に対しては、たとえ「スズメバチ用」と書かれたスプレーであっても素人が手を出すべきではなく、迷わず専門の駆除業者に依頼することが自分と家族の命を守るための唯一の正解なのです。
スズメバチに市販スプレーを向けてはいけない理由